断熱材とは、家の防寒着のようなものです。
防寒着には綿のどてらや、ウールやカシミヤのセーター、ダウンのジャケット、ゴアテックスを組み合わせたものなど、さまざまなものがあります。湿気を吸いやすいもの、薄くても暖かいもの、自然の素材、化学素材などさまざまです。重ね着をするほど暖かくなります。長所も短所もありますが、使い方によって生きてきます。住宅の断熱材も同様です。
断熱材は、無機繊維系、木質繊維系、発泡プラスチック系に分類されます。
無機繊維系のグラスウールやロックウールは安価で不燃性であるのが長所ですが、吸湿性があるので、施工をきちんとしないと壁内結露などで暖かくならないどころか、家の寿命を縮めます。
木質繊維系のセルロースファイバーなどは、新聞紙などの古紙を再利用し不燃処理して作るものです。自然素材で自然に返るものですから、環境によいと思います。
発泡プラスチック系は断熱性がよく、透湿抵抗が高いので湿気ることもなく、水にも強く、ボード状で施工もしやすいことが長所です。欠点は燃えること、値段が高いことです。過去にフロンが発泡ガスとして使われ、環境への影響が懸念されましたが、今は他のガスに置き換えられました。ネオマフォームは難燃性のフェノールフォームで、発泡ガスも一貫してノンフロンでしたので、安全性が高く、環境にも配慮された材料といえます。
住宅業界では残念ながら誹謗中傷が多く飛び交っています。自分の使っている断熱材はよいが、他は悪いといった感じです。あまり感じのよいことではありません。
たとえば、「グラスウールは湿気を吸いやすいので危険だ、家が腐る」「発泡ウレタンは発泡ガスにフロンを使っているから環境に悪い。」「発泡ポリスチレンは火事になったら大変だ。」といった類です。こういったたぐいの話をするところはあまり信用しないほうがよいです。みんな長所短所があるのだから・・・。
世界的に見れば、断熱材で一番多く使われているのがグラスウールです。グラスウールの一番の長所は安いことです。断熱性は厚みでカバーできます。ただし、これまで日本では誤ったずさんな使われ方をしてきたために、中傷の対象とされてきました。正しい施工をすれば、すばらしい断熱材です。すなわち精度の高い気密シートの施工、すきまやしわをつくらないていねいな施工です。正しい施工をしていないならば、壁内結露で家が腐ることにもなるので、非難されて当然ですが、断熱材自体は非難の対象にはなりません。
発泡ウレタンも発泡ポリスチレンも、断熱性を良くするためにかつてフロンを使っていました。特定フロン(CFC)はオゾン層を破壊することで問題になり、代替フロン(HCFC)に切り替わりました。しかしそれも地球温暖化効果がCO2の約1000倍もあるということで、近年では水発泡や炭化水素ガス発泡に切り替わりました。水発泡や炭化水素発泡であれば温暖化への影響はありません。
発泡系断熱材はほとんどが自己消火性をもたせてあり、火災で燃え広がることはないようです。
断熱性能は材料の熱伝導率と厚みで決まります。熱伝導率とは、その材料の厚み1mあたり温度差1度あたり何ワットの熱が移動するかという物質固有の値です。断熱性が低い(熱伝導率が高い)材料でも厚くすれば断熱性能がよくなります。
以下に主な材料の熱伝導率を紹介します。
表.主な材料の熱伝導率
材料 | 熱伝導率(W/mK) | グラスウール10k、10cm に相当する厚み |
アルミ | 200 | 40000cm |
鋼材 | 53 | 10600cm |
コンクリート | 1.6 | 320cm |
ガラス | 1.0 | 200cm |
塩化ビニル | 0.17 | 34cm |
木材(杉、松) | 0.12 | 24cm |
グラスウール10K | 0.050 | 10cm |
グラスウール16K | 0.045 | 9cm |
高性能グラスウール16K | 0.038 | 7.6cm |
ビーズ発泡ポリスチレン特号 | 0.034 | 6.8cm |
押出発泡ポリスチレン3種 | 0.028 | 5.6cm |
発泡ウレタン | 0.024 | 4.8cm |
ネオマフォーム | 0.020 | 4cm |
グラスウール10kの10cmと同じ断熱性能にするためには、計算上アルミで400メートル、鋼材で106メートルというありえない厚みが必要になります。コンクリートは320cm、木材でさえ24cmですから、断熱材の性能はそれなりにいいのです。
構造材を考えたとき、木材の断熱性は鋼材やコンクリートに比べて格段に優れています。でもログハウスでグラスウール10k10cmと同等の性能を持たせるためには24cmの厚みが必要になります。
発泡ポリスチレンや発泡ウレタンの性能はそのグラスウールより優れていますが、弊社が壁に採用しているネオマフォームは、それらよりもさらに優れています。
熱貫流率は、1m2あたり温度差1度あたり、壁や天井などを通過する熱量をいいます。断熱材の種類や厚み、構成する材料や構造によって変わってきます。壁や天井などの断熱性能は熱貫流率で表され、計算で求めることができます。サッシなどはメーカーがデータを提供してくれます。下記に主な壁の断熱構造と熱貫流率を示します。
断熱性能がよいほど熱が逃げにくいということですから、少ないエネルギーで快適な環境が得られます。今年みたいに灯油が高いようだと、家の性能がよいほど、灯油代が助かることになります。
壁の断熱構造 | 熱貫流率 (W/m2K) |
|
内断熱の壁 | 断熱材なし | 2.72 |
グラスウール10K 100mm |
0.54 | |
高性能グラスウール16K 100mm |
0.45 | |
ネオマフォーム 50mm |
0.46 | |
外断熱の壁 | 押出発泡ポリスチレン 3種 50mm |
0.45 |
ネオマフォーム 50mm |
0.34 | |
サッシ (参考) |
アルミサッシ 単板ガラス |
6.51 |
アルミ樹脂 ペアガラス |
3.49 | |
シャノン樹脂サッシ Low-Eペアガラス |
1.7 | |
シャノン樹脂サッシ Low-Eペアガラス Arガス入り |
1.5 | |
木製サッシ Low-Eトリプルガラス Arガス入り |
1.2 |
内断熱の高性能グラスウール16K100mmと、内断熱のネオマフォーム50mmは熱貫流率が0.45W/m2Kぐらいでほぼ同じ性能です。同じ厚みでも外断熱にすると、熱貫流率は0.34W/m2Kになって性能が格段に向上します。
これは内断熱の断熱材が、柱や梁によって分断されるのに対し、外断熱では家全体をすっぽりと覆う構造の差によるものです。