換気は、人間の健康を守るためにとても重要です。適切な換気を行うことは、家の維持にとっても良好な結果をもたらします。
シックハウスが社会問題化したことにより、2003年、建築基準法により、住宅に0.5回/時の換気量を確保できる換気設備の設置が義務付けられるようになりました。0.5回/時の換気量とは、たとえば容積が300m3の家では1時間に150m3の換気量ということです。この換気量が安定して確保できることが大事です。多すぎると冬寒いし、少ないと換気不足になります。
一昔前の家は床面積1?あたりの隙間が20cm2以上もあったとされます。床面積120m2の家全体で2400cm2、換算して60cm×40cmの小窓ぐらいの隙間があって、隙間風が吹き抜けていたので、換気について考える必要はなかったのです。そのかわり冬は暖房が効かず、寒くてたまりませんでした。
最近の家は、昔の家に比べるとずいぶん気密性が高くなりました。特に気密工事をしないで建てても、床面積1?あたりの隙間が5平方cmぐらいと言われています。窓を閉めた状態では、強い風でも吹かないと、自然の換気は期待できません。
昔の家 隙間相当面積 20c?/? |
今の家 気密施工をしなくても 隙間相当面積 5c?/? |
一方、家の中には空気の汚染原になるものがいろいろと存在します。汚染源は建材だけとは限りません。汚染物質は空気中に少しづつ放出されるので、空気の移動がないとだんだん濃度が高くなっていきます。そこで換気設備が必要になってくるのです。下表に、汚染源の主なものをまとめてみました。
発生源 | 汚染物質 |
建材 | ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、 トルエン、キシレン クロルピリホス(防蟻材)など |
カーテン、家具 電化製品など |
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド など |
ガスレンジ 室内燃焼ストーブ |
二酸化炭素、水蒸気 二酸化窒素、一酸化炭素 |
人間、ペット | 二酸化炭素、水蒸気、臭気 |
湿気 | カビ、ダニ |
日常生活 | 粉塵 |
タバコ | 1000種類以上の化学物質 |
化学物質は、シックハウス、化学物質過敏症などの人の病気の原因になります。
湿気は、木材を腐らせるなど、家の病気の原因になります。また、ダニやカビを発生させ、アトピーやアレルギーの原因にもなります。
2003年7月にシックハウス法が施行されました。主な内容は、ホルムアルデヒドの規制とクロルピリホス(防蟻薬材)の使用禁止、24時間換気の義務付けです。しかし、この法律は最低限の基準であって、この法をクリアしたからといってもシックハウスや化学物質過敏症を完全に防げるとはいえません。体質や環境で個人差がどうしてもあるのですが、赤ちゃんや子供たち、主婦は一日の大半を家の中で過ごします。できるだけ有害になりそうな化学物質を避け、適切な換気計画を進めることが大切です。
換気は、汚れた空気をきれいな空気と入換えるために必要です。
ファンなどの機械を使って換気することを強制換気といいますが、機械による排気や給気の組み合わせで、換気の性質が変わってきます。換気の種類は大きく分類して次の3つになります。
分類 | 内容 | イメージ図 |
第1種換気 | 排気も給気も機械による。 排気と給気の間で熱交換を行う熱交換タイプが多い。 熱交換により、省エネルギーを図る。 直接寒気が入らないので、寒さが緩和される。 熱交換は、全熱タイプと顕熱タイプがある。 住宅に使われる。 |
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第2種換気 | 給気を機械で行う。 室内が正圧になる。(外気より室内の気圧が高くなる。) 室内の気圧が高くなる結果、隙間から自然排気される。 室内の気圧が高いので、外部から室内に隙間風が入ってきにくい状態になる。 目的に応じたフィルターを使って給気の空気質を管理し、手術室や工業用のクリーンルームに利用される。 壁の中に室内の空気が侵入しやすく、壁内結露になる危険性が高いので、住宅ではほとんど使われない。一部のソーラーシステム利用の住宅で使われているのみ。 |
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第3種換気 | 排気を機械で行う。 室内が負圧になる。(外気より室内の気圧が低くなる。) 室内の気圧が低くなる結果、隙間から自然給気される。 壁の中に室内の空気が侵入しにくいので、壁内結露になりにくい方向になる。 住宅に使われる。 |
第1種換気は機械で給気も排気も行うタイプです。排気の熱を回収する熱交換タイプのものがほとんどです。一般的に設備費もランニングコストも第三種換気より高くなります。
第2種換気は、給気を機械で行う換気です。室内が正圧になって外気が室内に侵入しにくいので、工業用のクリーンルームや手術室で使われます。しかし室内の空気が壁内に侵入しやすく、壁内結露の危険性が高まるため、住宅ではめったに採用されません。例外的に、某ソーラーシステムの家に採用されているのみです。温暖地ではともかく、寒冷地ではかなり危険です。
第3種換気システムは、しくみが単純であり、設備もランニングコストも安くて済むので、多くの住宅に採用されています。高気密・高断熱の先進地である北海道でも、採用比率が最も高いシステムです。個別換気タイプ(各部屋に換気扇と給気口をつけるタイプ)と、集中換気タイプ(ひとつの換気扇からのダクト配管と給気口で換気計画するタイプ)がありますが、集中換気タイプのほうが安定した換気が期待できます。
熱交換換気は給気も排気も機械で行い、熱交換も行うために、設備費がも消費電力も大きくなります。おおよそ第三種換気の倍以上です。電気代を考えると、まだ省エネとはいえません。輸入品ですばらしいものがありますが、すごく高価です。国産で安くていいものができるようにメーカーにお願いしたいと思います。
○計算例 某M社 熱交換換気扇
最大換気量150m3なので、0.5回の換気量を確保するために40坪の家では2台必要である。
消費電力80W×2台=160W
年間電気代1kw25円として
160W*24h*365day/1000*25円=35,040円
月当たりでは2920円
灯油70円/Lとすると約500リットル分の灯油代に相当する。
熱交換による灯油代の節約は、熱交換率や設備のメンテナンス、住宅の気密性能などにもよるが、よく見積もっても200リットル程度と思われるので、電気代が損。
換気設備を1台にして不足分を3種の局所換気にする方法では、電気代が約半分になるが、熱交換率が落ちるので、期待するほど節約できない。
○計算例 某社 最新の直流モーター型第三種換気扇
消費電力10WでOK
年間電気代
10W*24h*365day/1000*25円=2190円
月当たりでは183円
国産品では最新の直流モーター型第三種換気扇を使うのがトクだという計算になります。
日本では、車部品メーカがつくった全熱交換タイプの第一種換気が、大手某ハウスメーカーや某フランチャイズに採用されて大ヒット商品になっています。なぜかというと第1種換気としてはすごく安いのです。しかし重大な欠点があるのを知らないで使っているひとがほとんどで、換気をちょっと勉強した人はこの商品を絶対に使いません。
なぜなら、上記のように電気代が高くつくので省エネになるか疑問です。しかも全熱交換方式(熱交換のとき、熱だけ交換するものを顕熱交換といい、熱と一緒に水蒸気も交換するものを全熱交換という。水蒸気は大きなエネルギーを持っているので、全熱交換の方が熱交換率がよい。しかし、水蒸気を交換するとき臭いやホルムアルデヒドなどの有害物質も交換してしまうので問題。)なので、せっかく換気で有害物質を排気しても、熱交換のときに有害物質は給気に移って室内に戻ってくるのです。これでは、換気の意味がありません。換気先進国の北欧では、顕熱交換が主流であり、全熱交換は使われないということです。しかし日本では、全熱交換換気扇を使っているハウスメーカーが結構多いのです。(日本輸入換気システム連盟)
高気密住宅は、換気不良で窒息するようなイメージを持っている人がまだ多いと思います。建築業界はおそろしく保守的な業界で、建築士の過半数がまだ中気密のほうがいいと思っているようです。
しかし換気設備をつけたとき、高気密のほうが換気がうまくいきます。低気密だと換気がうまくいきません。なぜでしょうか?
高気密住宅で換気すると、隙間が少ないために、決められた入口から空気が入ってきます。すなわち計画された換気経路通りに空気が流れます。低気密では、空気は隙間から入ってくるので、決められた入口からはほとんど入ってきません。換気扇の周りでのみ換気が行われます。これをショートサーキットといいます。
40坪(132m2)の家に、換気のための空気の入口(給気口)を5ヶ所設置した場合を考えて見ます。給気口1ヶ所あたりの隙間面積は15cm2前後といわれます。6ヶ所で給気口の面積は90cm2になります。一方、家の隙間の面積は、気密性能(隙間相当面積)に床面積を掛けて求められます。
下表を見てください。気密性能が7.0cm2/m2や5.0cm2/m2では、給気口の面積よりも、隙間の面積の方が圧倒的に多いことがわかります。給気口からの換気を期待して換気計画を立てるのですが、隙間が多すぎて給気口からの換気は期待できません。
次世代省エネルギー基準をクリアする気密性能2.0でも、隙間面積は給気口面積の3倍もあります。単純計算で、給気口からの換気は25%しか期待できません。気密性能が0.5でようやく、隙間面積と給気口面積が逆転します。
換気を考えたとき、最低でも気密性能を1.0以下にしなさい、といろんな教科書に書いていますが、大手ハウスメーカーも含め、この性能を安定して実現できている工務店はまだ少ないようです。
40坪(132m2)の家の隙間面積と給気口面積
気密性能 (cm2/m2) |
隙間面積 (cm2) ? |
給気口面積 (cm2) ? |
隙間の割合 ?/(?+?) |
7.0 | 924 | 90 | 91% |
5.0 | 660 | 90 | 88% |
2.0 | 264 | 90 | 75% |
1.0 | 132 | 90 | 59% |
0.5 | 66 | 90 | 42% |
次世代省エネルギー基準が、いま日本で一番きびしい省エネルギー基準です。日本を気候により6つの地域に分けて、それぞれの地域の省エネ基準を定めています。岩手県は、西和賀町や八幡平市などが北海道と同レベルの?地域、遠野はほとんど?地域に近いのですがぎりぎり?地域、盛岡、北上、水沢なども?地域、一関や平泉、大船渡などは仙台と同じ?地域に分類されています。この基準をクリアするために、仕様規定と数値規定が定められており、どちらかをクリアすればよいことになっています。大手ハウスメーカーは、計算が得意なので、断熱材を仕様規定より薄くして、数値規定でクリアするという方法をよく採用しています。なぜなら断熱材を薄くしたほうが、コストダウンになるし、従来仕様からの設計変更も少なくてすむからです。
?地域では熱損失係数Q値が1.9W/?K以下と定められています。仕様規定は少し余裕をもった基準なので、断熱材の厚みを仕様規定ぎりぎりにして家を建てても、基準を余裕でクリアする1.7とか1.8W/?Kぐらいになってしまいます。数値規定にすると、少し断熱材を薄くできる余裕があるのです。・・・・暖かい家をつくろうとまじめに考えている人はこんなみみっちいことは絶対考えないと思いますが・・・・。
そして、計算でQ値をよくする究極の方法が熱交換換気を採用することなのです。
高断熱高気密住宅にすると、家全体から逃げる熱の約3分の1から4分の1が換気によるものです。もし、その熱損失の80%を回収できれば、
80%×1/4=20.0%
家全体で2割%の改善が期待できます。計算上はQ値2.0W/?Kの家が1.6W/?Kになるのです。
しかし、現状のQ値計算方法には電気代の要素が入っていないという、大きな欠点があります。
さらに、外気温と室温の温度差や、風速によって隙間風が発生するので、気密性能によって熱損失が大きく変わってきます。下記に、隙間風と気密性能の関係を示します。
外気温0℃、室温20℃の時の隙間換気量
相当隙間面積 cm2/m2 |
平均風速2m/秒時の 隙間換気量 |
平均風速6m/秒時の 隙間換気量 |
5.0 | 約0.48回/時 | 約1.2回/時 |
4.0 | 約0.39回/時 | 約0.9回/時 |
3.0 | 約0.3回/時 | 約0.75回/時 |
2.0 | 約0.2回/時 | 約0.5回/時 |
1.0 | 約0.1回/時 | 約0.25回/時 |
0.7 | 約0.1回/時以下 | 約0.18回/時 |
* 換気量 (回/時) は1時間に家の空気が何回入れ換わるかという数字。たとえば容積300m3の家で1時間に150m3の換気をすると、0.5回/時の換気量という。シックハウス法では、換気量が0.5回/時以上確保できるような換気設備の設置を義務付けている。 |
上の表から、相当隙間面積が大きいほど、温度差と風による隙間換気量が多くなるのがお分かりでしょう。
たとえば、気密を考慮しないで建てた気密5.0の家は、風速6mの風が吹いているとき、換気設備による換気量0.5回/時のほかに、1.2回/時の隙間風換気があるということです。単純計算で1.7回/時の換気になるので、隙間風でゾクゾクということになります。
次世代基準の気密2.0の家でも、風速6mのとき、0.5回の隙間換気量があるので、換気計画の0.5回と合わせて1.0回の換気量になります。Q値で計算すると、次世代基準Q値=1.9W/m2・Kの家が2.4W/m2・Kに落ちるので、吹雪の日は気密2.0では結構寒いです。暖かさの差は、こういうところで表われます。
せめて気密は1.0以下にしたいものです。
住宅はすべてメンテナンスが大切なのですが、特に換気設備は、住む人がメンテナンスをしなければ機能を果たさないというほど、メンテナンスが大切になります。気をつけたいのはフィルターの目詰まりです。綿ほこり等により、フィルターが目詰まりをおこすと、換気扇が回っても空気が流れなくなります。熱交換換気扇では、熱交換素子の清掃をしないと、熱交換率が低下します。メンテナンスをしない家では、空気がよどみ、冬は結露が異常に多くなったりします。
換気設備によりメンテナンスの方法が異なるので、引渡しの時や定期点検の時に、よく説明してもらうことが必要です。
断熱材とは、家の防寒着のようなものです。
防寒着には綿のどてらや、ウールやカシミヤのセーター、ダウンのジャケット、ゴアテックスを組み合わせたものなど、さまざまなものがあります。湿気を吸いやすいもの、薄くても暖かいもの、自然の素材、化学素材などさまざまです。重ね着をするほど暖かくなります。長所も短所もありますが、使い方によって生きてきます。住宅の断熱材も同様です。
断熱材は、無機繊維系、木質繊維系、発泡プラスチック系に分類されます。
無機繊維系のグラスウールやロックウールは安価で不燃性であるのが長所ですが、吸湿性があるので、施工をきちんとしないと壁内結露などで暖かくならないどころか、家の寿命を縮めます。
木質繊維系のセルロースファイバーなどは、新聞紙などの古紙を再利用し不燃処理して作るものです。自然素材で自然に返るものですから、環境によいと思います。
発泡プラスチック系は断熱性がよく、透湿抵抗が高いので湿気ることもなく、水にも強く、ボード状で施工もしやすいことが長所です。欠点は燃えること、値段が高いことです。過去にフロンが発泡ガスとして使われ、環境への影響が懸念されましたが、今は他のガスに置き換えられました。ネオマフォームは難燃性のフェノールフォームで、発泡ガスも一貫してノンフロンでしたので、安全性が高く、環境にも配慮された材料といえます。
住宅業界では残念ながら誹謗中傷が多く飛び交っています。自分の使っている断熱材はよいが、他は悪いといった感じです。あまり感じのよいことではありません。
たとえば、「グラスウールは湿気を吸いやすいので危険だ、家が腐る」「発泡ウレタンは発泡ガスにフロンを使っているから環境に悪い。」「発泡ポリスチレンは火事になったら大変だ。」といった類です。こういったたぐいの話をするところはあまり信用しないほうがよいです。みんな長所短所があるのだから・・・。
世界的に見れば、断熱材で一番多く使われているのがグラスウールです。グラスウールの一番の長所は安いことです。断熱性は厚みでカバーできます。ただし、これまで日本では誤ったずさんな使われ方をしてきたために、中傷の対象とされてきました。正しい施工をすれば、すばらしい断熱材です。すなわち精度の高い気密シートの施工、すきまやしわをつくらないていねいな施工です。正しい施工をしていないならば、壁内結露で家が腐ることにもなるので、非難されて当然ですが、断熱材自体は非難の対象にはなりません。
発泡ウレタンも発泡ポリスチレンも、断熱性を良くするためにかつてフロンを使っていました。特定フロン(CFC)はオゾン層を破壊することで問題になり、代替フロン(HCFC)に切り替わりました。しかしそれも地球温暖化効果がCO2の約1000倍もあるということで、近年では水発泡や炭化水素ガス発泡に切り替わりました。水発泡や炭化水素発泡であれば温暖化への影響はありません。
発泡系断熱材はほとんどが自己消火性をもたせてあり、火災で燃え広がることはないようです。
断熱性能は材料の熱伝導率と厚みで決まります。熱伝導率とは、その材料の厚み1mあたり温度差1度あたり何ワットの熱が移動するかという物質固有の値です。断熱性が低い(熱伝導率が高い)材料でも厚くすれば断熱性能がよくなります。
以下に主な材料の熱伝導率を紹介します。
表.主な材料の熱伝導率
材料 | 熱伝導率(W/mK) | グラスウール10k、10cm に相当する厚み |
アルミ | 200 | 40000cm |
鋼材 | 53 | 10600cm |
コンクリート | 1.6 | 320cm |
ガラス | 1.0 | 200cm |
塩化ビニル | 0.17 | 34cm |
木材(杉、松) | 0.12 | 24cm |
グラスウール10K | 0.050 | 10cm |
グラスウール16K | 0.045 | 9cm |
高性能グラスウール16K | 0.038 | 7.6cm |
ビーズ発泡ポリスチレン特号 | 0.034 | 6.8cm |
押出発泡ポリスチレン3種 | 0.028 | 5.6cm |
発泡ウレタン | 0.024 | 4.8cm |
ネオマフォーム | 0.020 | 4cm |
グラスウール10kの10cmと同じ断熱性能にするためには、計算上アルミで400メートル、鋼材で106メートルというありえない厚みが必要になります。コンクリートは320cm、木材でさえ24cmですから、断熱材の性能はそれなりにいいのです。
構造材を考えたとき、木材の断熱性は鋼材やコンクリートに比べて格段に優れています。でもログハウスでグラスウール10k10cmと同等の性能を持たせるためには24cmの厚みが必要になります。
発泡ポリスチレンや発泡ウレタンの性能はそのグラスウールより優れていますが、弊社が壁に採用しているネオマフォームは、それらよりもさらに優れています。
熱貫流率は、1m2あたり温度差1度あたり、壁や天井などを通過する熱量をいいます。断熱材の種類や厚み、構成する材料や構造によって変わってきます。壁や天井などの断熱性能は熱貫流率で表され、計算で求めることができます。サッシなどはメーカーがデータを提供してくれます。下記に主な壁の断熱構造と熱貫流率を示します。
断熱性能がよいほど熱が逃げにくいということですから、少ないエネルギーで快適な環境が得られます。今年みたいに灯油が高いようだと、家の性能がよいほど、灯油代が助かることになります。
壁の断熱構造 | 熱貫流率 (W/m2K) |
|
内断熱の壁 | 断熱材なし | 2.72 |
グラスウール10K 100mm |
0.54 | |
高性能グラスウール16K 100mm |
0.45 | |
ネオマフォーム 50mm |
0.46 | |
外断熱の壁 | 押出発泡ポリスチレン 3種 50mm |
0.45 |
ネオマフォーム 50mm |
0.34 | |
サッシ (参考) |
アルミサッシ 単板ガラス |
6.51 |
アルミ樹脂 ペアガラス |
3.49 | |
シャノン樹脂サッシ Low-Eペアガラス |
1.7 | |
シャノン樹脂サッシ Low-Eペアガラス Arガス入り |
1.5 | |
木製サッシ Low-Eトリプルガラス Arガス入り |
1.2 |
内断熱の高性能グラスウール16K100mmと、内断熱のネオマフォーム50mmは熱貫流率が0.45W/m2Kぐらいでほぼ同じ性能です。同じ厚みでも外断熱にすると、熱貫流率は0.34W/m2Kになって性能が格段に向上します。
これは内断熱の断熱材が、柱や梁によって分断されるのに対し、外断熱では家全体をすっぽりと覆う構造の差によるものです。
次世代省エネ基準では、寒冷地である?・?地域の気密は2.0cm2/m2以下と定められています。大手ハウスメーカーもその基準に従っています。それでは2.0cm2/m2以下であればいいのでしょうか?
世界一厳しいといわれるカナダのR-2000という基準では0.7cm2/m2以下です。
日本の断熱気密のトップランナーたちは0.5cm2/m2以下でやっています。
北海道の、国と道が関わった200年住宅「北方型住宅CEO」の住宅は、1.0cm2/m2以下と定められています。
これらは妥当な数字なのでしょうか。それとも過剰品質なのでしょうか。
私が以前勤務していた工務店は、ポリシーがなかったうえ施工棟数を追求していたので、ローコストの家から高気密高断熱の家までいろんな家をつくっていました。高気密高断熱の家でも、現場監督の技量によってばらつきが大きく、さらに1人の現場監督が数多くの現場を管理しなければならなかったので、さまざまな品質の家ができてしまいました。いちおう気密測定することになっていて、2.0cm2/m2以下で管理することになっていましたが、ほとんどが2.0に近く1.0以下もあるというようにばらついていたのです。私はその会社でアフターも担当していたために、貴重な体験をさせていただきました。
体験上いえるのは、2.0cm2/m2にちかいとかなり隙間風および冷気を感じることになり、冬はあまり快適ではないということです。0.5cm2 /m2以下の家とは雲泥の差です。1.0cm2/m2以下だとだいぶ違ってきます。誰もが苦情を感じないレベルは0.5cm2/m2以下のようです。断熱気密のトップランナーたちが気密性能を0.5cm2/m2以下にしているのもうなずけます。
たとえば床面積が150?で気密が2.0cm2/m2の家には300cm2の隙間があり、これはB5用紙ぐらいの大きさです。気密が0.3cm2/m2では45cm2の隙間で、名詞ぐらいの大きさです。
壁にB5用紙大(15×20cm)の穴が開いている場面と、名刺大(5×9cm)の穴が開いている場面を想像してください。真冬の冷たい北風を受けたとき、どちらが寒いかあきらかだと思います。
現在は、法律で家に換気設備を設置することが義務付けられています。
換気とは、部屋の空気の入り口と出口を決め、新鮮な外気を導入し、汚れた空気を外に出して、部屋の空気を新鮮に保つというものです。
気密が悪い建物での換気は、ホースに穴が開いた掃除機で掃除するのに似ています。 吸う力が極端に小さくなっているでしょう。
気密がいいと、部屋の一端から空気を排気すると、ほかに隙間がないわけですから、もう一端の入り口から自然に空気が入ってくる理屈です。決められた入り口から新鮮空気が入って、決められた出口から汚れた空気が出て行くという計画換気がうまくいきます。
気密が悪いと、せっかく空気の入り口と出口を決めているのに、ほかに入り口(隙間)がたくさんあるのでそこから隙間風が入ってきて、計画された入り口から空気がさっぱり入ってきません。すなわち出口付近は空気が動くが、きめられた入り口からは新鮮空気がさっぱり入ってこないのです。すなわち空気がよどみます。計画通りの換気をするためには気密がよくなければいけないのです。
気密測定もしないで熱交換換気を使ってますよ、というのは最悪です。
熱交換換気は部屋から排気する暖かい空気から、外から給気する冷たい新鮮な空気に、熱交換素子を通して熱を移動させ熱回収するものです。
ところが、気密が悪いと隙間から直接空気が出入りするので、この分は熱が回収できません。
ちなみに気密が2.0cm2/m2のとき、風速6mの風が吹いただけで隙間風によって家の空気が0.5回入れ替わるというデータがあります。これは熱交換換気で換気される換気量と同じくらいです。この隙間風からは熱がまったく回収されません。
すなわち、熱交換換気の熱交換率が70%でも、たった風速6mの風が吹いただけで、実質の熱交換率が半分の35%に落ちるということです。真冬の吹雪の日には目も当てられないではありませんか。せっかく熱交換換気扇を使ってもこれでは意味がないと思いませんか。
気密が1.0cm2/m2でも0.25回の隙間換気があります。0.5cm2/m2であれば0.1回以下なので、実質の熱交換率はほとんど落ちません。